さて、名古屋大学大学院生命農学研究科元教授の中村英士先生は、昨年11月9日沖縄県阿嘉島近海で、 海洋天然物化学の研究材料採集中に水難事故に遭われ死去されました。 中村先生は、享年48才とあまりにも早すぎるご逝去であります。
中村先生は、昭和50年横浜市立大学文理学部理科(中川淑郎教授)を卒業、 昭和52年名古屋大学大学院農学研究科博士課程前期課程(食品工業化学専攻)を修了、 昭和55年同後期課程を修了(後藤俊夫教授)、農学博士の学位を受けられ、 昭和55年8月から三菱化成生命科学研究所(平田義正先生)に移られ、 昭和58年同副主任研究員、昭和61〜63年ハーバード大学博士研究員(岸 義人教授)、 昭和63年三菱化成生命科学研究所主任研究員として研究されました。 平成元年北海道大学理学部講師(村井章夫教授)として大学に戻られ、 平成2年同助教授に昇任されました。 平成10年4月に名古屋大学大学院生命農学研究科の創設にあたり、新設されたバイオモデリング講座の教授として赴任されて以来、 精力的に研究室の設立に励まれました。 新実験室も整備され、研究室員も昨年10月に採用となった大場助手を合わせて計12名となり順調な滑り出しでした。 また、平成12年度から発足した文部省科学研究費補助金特定領域研究「未解明生物現象を司る鍵化学物質」 (上村大輔教授領域代表)の研究班長として活躍してこられました。
中村先生の研究は、誠に精力的で海洋天然物化学における特異な生物活性と新規な構造を求めるもので、 内外の学会で極めて高い評価を受けてこられました。 日本農芸化学会より1992年農芸化学奨励賞「海洋生物の生物活性天然物」を、 日本化学会より平成8年度日本化学会学術賞「海洋微小藻の生物現象と微量活性物質に関する有機化学的研究」を受賞されました。 また天然物化学談話会の世話人代表としても活動され、若い人からも慕われる存在でした。 名古屋大学に来られてからも、共生微小生物の研究や生物発光の研究にも独創的な展開を進めてこられました。 名古屋大学は、多くの研究科で有機化学研究において世界的に極めて高い評価を受けており、 次の世代として期待が大きかっただけに、中村先生を失ったことは大学院生命農学研究科はもとより、 大学としても痛惜の念に耐えません。 ここに中村英士教授の生前のご功績と人柄を偲び、衷心より哀悼の意を表し、ご冥福をお祈り致します。
ご遺族は、玲子夫人・英樹君(高1)・美樹さん(小5)の三人で、それぞれ大切な時期を迎えられるところであります。 このような折りに、予期もしない不幸な出来事にみまわれたご遺族の悲しみと今後のご苦労は察してあまりあるものがあります。 特に、お子さん達が社会人として巣立たれるまでの教育資金など、 ご遺族にかかる負担は心身ともにこの先にわたり並々ならぬものがあると推察されます。
つきましては、このような事情を考慮致しまして私ども関係者で相談し、ご家族を励まし、
今後のお子さま達のご成長の一助としていささかなりともお役に立つことを念願し、このたび遺児育英基金を募ることと致しました。
なにとぞ事情ご賢察の上、皆様のご賛同とご協力を賜りたく存じます。
敬具
平成13年3月
記
故 中村英士教授遺児育英基金発起人名古屋大学総長 松尾 稔
名古屋大学副総長 山下 興亜
名古屋大学副総長 奥野 信宏
名古屋大学物質科学国際研究センター長 野依 良治
名古屋大学大学院生命農学研究科長 並河 鷹夫
大学院生命農学研究科教授 磯部 稔
大学院理学研究科教授 上村 大輔
大学院生命農学研究科教授 海老原史樹文
大学院生命農学研究科助手 大場 裕一
大学院生命農学研究科教授 坂神 洋次
大学院生命農学研究科助教授 束村 博子
大学院生命農学研究科教授 中村 研三
大学院生命農学研究科助教授 堀尾 文彦
大学院生命農学研究科教授 山本 進一
大学院生命農学研究科教授 若杉 昇
大学院生命農学研究科事務長 伊佐治 優
ハーバード大学教授 岸 義人
ウッズホール海洋研究所 下村 脩
北海道大学大学院理学研究科教授 村井 章夫
大学院薬学研究科教授 小林 淳一
北海道大学大学院農学研究科教授 吉原 照彦
東北大学大学院理学研究科教授 平間 正博
大学院薬学研究科教授 大泉 康
東京大学大学院理学系研究科教授 橘 和夫
大学院農学生命科学研究科教授 伏谷 伸宏
生物発光化学発光研究会会長 辻 章夫
横浜市立大学名誉教授 中川 淑郎
名古屋工業大学教授 川井 正雄
徳島大学薬学部教授 楠見 武徳
大阪大学大学院理学研究科教授 村田 道雄
をはじめとする400人