![]() ケイ素不飽和三員環化合物を合成しました。ハロシランの還元的縮合反応です。脱アルキル化すると2πホモ芳香族性の特徴を備えたテトラシレニウムイオンが得られました。この化合物は、"フリー"な(つまり溶媒や対アニオンとの相互作用のない)ケイ素カチオンとして初めて構造解析に成功した化合物です。渡環Si-Si原子間距離は2.692(2) Åで通常の単結合より長いことが分かりました。ちょうどこの論文を発表した時期は、ケイ素"フリーカチオン"を求めて多くの研究者が競争していた頃でした。
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![]() テトラシレニウムイオンを一電子還元すると環状シリルラジカルが得られました。さらに還元を続けると環状シリルアニオンになります。いずれの化合物も電荷または不対電子が3つのケイ素原子上に非局在化していることが分かりました。いわゆるアリル型の3つのπ軌道を形成する電子構造です。特筆すべきはこの3つの化学種を電子の授受によって相互変換可能である点です。それぞれの化合物は電子の数が一つずつ違うだけですが、全く異なる構造をしており、また色も劇的に変化します。カチオンは黄色、ラジカルは赤、アニオンは緑でした。ここで得られた環状のシリルラジカルは結晶構造解析のなされた最初の化合物です。 |
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シリルラジカル、ゲルミルラジカルの合成 ![]() 非環状型のシリルラジカルおよびゲルミルラジカルを合成しました。非常の単純な反応で、ワンポットでグラムスケールの合成が可能です。いずれも熱的に安定な結晶として単離することができます。結晶状態でラジカル中心間の距離は9 Å以上離れています。結晶の色は黄色でした。ラジカル中心は三配位平面構造をしています(結合角の和は360°)。つまり、πラジカルです。一般に、高周期元素ラジカルはσラジカル、三角錐型した構造になるのですが、この化合物は嵩高くかつ電気陽性なケイ素置換基の効果によって平面πラジカルになっています。
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ラジカルの不対電子が収容されているp軌道の方向に並んだ一次元スタック構造をしています。 【Go to PDB file】 MDL plug-in is required. |
![]() ゲルミルラジカルは適当な条件下で酸化還元反応を行うと、それぞれ対応するゲルミルカチオンおよびゲルミルアニオンになります。結晶構造解析の結果、中心元素の電子状態の違いによってもたらされる構造変化にある規則性が見出されました。電子を入れる程(つまりカチオンよりラジカル、ラジカルよりアニオン)、中心元素周りの結合長は短くなっていきました。これは、電子を収容しているp軌道が隣接するSi-Cσ*軌道との超共役効果によって説明できます。また、このゲルマニウムカチオンは"フリー"イオンとして構造解析された最初の化合物です。
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![]() これはスズラジカルとスズカチオンの合成です。やはり、いずれも平面三配位構造をしていました。スズ化合物はラジカル反応剤やルイス酸として有機合成化学では使われることが多いのですが、固体状態での構造は不明でした。スズラジカルの固体および溶液中の構造と、反応性および他の周期の元素と比較することで、典型元素ラジカルに関する新たな知見が得られました。
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